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変わるセカンドハウスのプレゼンス。変わらないロシア人の根本的な強さ。【私の街では今 vol.5〜モスクワ編】 - VOGUE JAPAN

1ヵ月間「非労働日」に指定され、敷かれる厳戒態勢。

モスクワ市内の道路には、消毒液入りの水を散布する車の姿がみられる。

今月2日、プーチン大統領は緊急演説を行い、3月28日からロシア全域に発令していた「非労働日」を4月30日まで延長することが発表されました。これは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために出勤せずに自宅に留まるよう呼びかけるもので、公的機関、医療機関、生活必需品の商店、生産の中断が難しい企業などを除き企業を休業させるという決定。実際は、企業の完全休業は難しく、この発表を受け多くが在宅勤務を導入しました。

一方、ソ連時代の名残で雇用者が守られおり、通常業務が停止している間の被雇用者の給与は保証するという経済対策措置が発表されました。但し、全国民に適用されるかどうかは不透明な部分があり、雇用契約内容によっては今回の緊急措置で減給にならざる得ない人もいると考えられています 。他国同様、ロシアも厳しい状況に置かれているのは変わりありません。

モスクワでは3月30日から外出禁止令が発令。街中の医療機関や食料品店など、一部の例外を除き商業施設は閉鎖され、人の姿もまばらになりました。よく見かけるようになったのは警察官の姿。4月に入ってからは罰則制度が導入され、食料品の買い物やゴミ捨てなどを除き、不要な外出をした場合は4千ルーブル(約6000円)の罰則が課されるようになりました。また、必要不可欠な業務で車や公共交通機関の利用が必要な人も、今月15日からは電子通行証の所持が義務になり、厳戒態勢が敷かれているのです。

感染者が出たマンションでは、玄関や階段など防護服を着た人が消毒にあたる。

変わるセカンドハウス「ダーチャ」のプレゼンス。

こうした状況の中、市民の避難場所となっているのが、ロシア語でいう「ダーチャ」と呼ばれるセカンドハウス。セカンドハウスというと、別荘のようで耳触りが良いのですが、ダーチャはソ連時代に無償で支給され、シンプルに野菜を植える畑だけのものから、2~3階建ての立派なお屋敷付きなど、その形態はさまざまです。

ソ連崩壊後の混乱期、物質不足で商店から食料がなくなる危機を乗り越えることができたのは、まさしくダーチャで自給自足ができたという歴史があります。しかし、インフラが整っていない郊外にあり、また都心も昔と比べて娯楽が増えてきたため、手入れが必要なダーチャを疎遠し手放す人も出てきました。

モスクワ市民の多くが避難するダーチャ。

ところが、3月にアナウンスされた外出自粛でダーチャのプレゼンスが変わったのです。モスクワでは外出自粛になる前の週から、ダーチャへ向かう車が増えたため、郊外では渋滞が発生。所狭しと車が駐車されていた都心部は、見る影もなくがらがらになりました。

先日、知り合いのバーブシュカ(おばあさん)から電話が掛かってきて、嬉しそうにダーチャでの生活を話してくれました。4月の郊外はまだ気温10℃以下で寒いのですが、電気ヒーターを持参し、ペットたちと暖かく過ごせているとのこと。そして、もともと日照時間が短い国なので、高齢者が外に出られないのは酷。ゆえに、ダーチャにいれば晴天時は庭で日光を浴び、健康的に過ごすことができるのです。

若いボランティアの活躍。

3月26日からモスクワ市内では、65歳以上は自主的隔離体制を遵守するよう義務付けられていました。そこで、一人暮らしの高齢者も多いモスクワでは、若いボランティアの人たちが高齢者宅に食料品を届けています。好みの食べ物やメーカーもあるので、ボランティアの人たちが電話で必要な物のリストを聞き、代わりに買いに行ってくれるのです。

家に引き籠もっているお年寄りは寂しいせいか、若者が食料品を届けにくると「お茶でも一杯飲まないか」と部屋に招待してくれることが多々あるみたいですが、そこは皆ありがたく断り、業務を遂行することに専念しています。

子育て世代の苦悩と支援。

立ち入り禁止となっている公園。

モスクワの公立学校は3月21日から一斉閉鎖となったため、学校のネットサービスを通して与えられた課題や宿題を自宅で行っています。在宅ワークをしながら小学2年生の娘と過ごしている友人によると、普段学校の先生が教えていることを家庭で請け負わなくてはいけないので大変。更に、ネットサービスもどこに課題のファイルがあるか迷宮入りで、非常に使い勝手が悪く、日々苦労しているそうです。

プーチン大統領の施策「母親資本」の支えもあり、ワーキングマザーの多いロシア。例えば育児休暇は最長子どもが3歳になるまで取得でき、同一ポストへの復帰が保証。国からの補助も手厚く、2人以上の子どもを持つ家庭には、 住宅購入や教育費等の手当が受けられる制度もあります。今回の感染拡大防止対策により、3歳以下の子どもがいる家庭を対象に4月から当面の3カ月間、母子手当に月5千ルーブル(約7千円)を加算して支給するということも発表されました。

難局を乗り越える、STAY HOMEの工夫。

食品売り場以外は閉店しているショッピングセンター。

私自身はというと、3月中旬に海外からモスクワに戻ってきたこともあり、自主的に自宅隔離を始め、今も外に出るとしたら近くのスーパーでの手短な買い物とゴミ出しのみです。警察が厳格にパトロールをし、今までマスクをする習慣がなかったロシア人の多くがマスクをつけて歩くようになり、外は物々しい空気が漂っています。

しかし、この難局をみんなで乗り越えようと、さまざまな助け合いがあります。私が通っていたフィットネスクラブは、ヨガのレッスンをオンラインで配信してくれるようになり、無料で好きな時間に受講できるようになりました。また、ロシアのオリンピック選手たちも、ストレッチ講座をライブストリーミングしているので、自宅にいながら選手たちと一緒に体を動かし運動不足を解消しています。

他にも、文化プログラムを自宅で楽しめるツールが多くの施設で紹介されています。例えば、普段はチケットが入手困難なボリジョイ劇場の有名バレエやオペラがYOUTUBEで視聴できたり、プーシキシ美術館はオンラインで美術鑑賞ができるバーチャル見学を行っています。

これから私が試す予定なのが、ワインのオンラインデグステーション。行きつけのワインバーは外出自粛中なので、代わりにソムリエがレコメンドワインセットを届けてくれます。そしてソムリエのライブストリーミングでバーにいるような気分を味わえるんだとか。

この非常事態の中、私はロシアの根本的な強さは変わらないように感じます。それは、この国がこれまで幾度となく厳しい時代を生き抜いてきた証に思います。とにかく自宅で過ごし、1日も早く街が正常化してくれることを祈るばかりです。最後に、私が好きな文化紹介ラジオ番組のSTAY HOMEキャンペーンでこんなことを言っていました。

「家に篭っているのは飽きた?プーシキンを読みましょう。そして自分の悲劇(ロシア・文豪プーシキン の作品「小さな悲劇」になぞって)を書きましょう!」

※この内容は、2020年4月24日のものとなります。

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Photos & Text: Kanako Ikeda Editor: Mina Oba

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April 26, 2020 at 06:00AM
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