■ハナ(29) 入社7年目、メーカー勤務。資産形成に興味がある。話が難しくなると、眠る癖がある。
■岡根(32) パーソナルファイナンス(個人向けの資産形成論)を教える大学講師。ハナのサークルの先輩。
■新興国債券、金利の高さで人気
ハナ 母が昔買ったなんとかいう金融商品が値下がりしてるの。でもよくわからなくてパンフレット持ってきました。
岡根 これはトルコリラの債券だね。債券というのは借金の証書みたいなもの。それを買った人は毎年決まった金利がもらえる。新興国の債券は金利が高いから人気なんだ。
ハナ 値下がりしたのは円高になったからだって説明されたらしいです。
岡根 実際、新型コロナウイルスを巡る危機で、メキシコやブラジル、南アフリカ、トルコなど新興国通貨が軒並み下落している。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「新興国は経常赤字国が多く、他の国からお金を借りている。危機時にはお金を貸している国がお金を引き揚げるので為替が下落しやすい」と解説している。そうしたリスクがあるからこそ金利が高くなっている面もある。
ハナ 男性でも悪い人って妙に魅力があったりします。
岡根 少し違うような…。大事なのはさらに構造的な要因を知っておくこと。トルコリラのグラフを見ると危機の前から通貨安・円高の傾向が続いているでしょ? 例えば10年前は1トルコリラ=60円だった。それがこの3月末時点で1トルコリラ=16円へ大幅な円高になっている。
ハナ ちょっと待って。60円から16円に円の表示が小さくなったので円安じゃあ?
岡根 そういう間違いが多い。1円あたりで考えないと。1トルコリラ=60円だと1円は0.017トルコリラでしょ? 1トルコリラ=16円だと1円は0.063トルコリラ。1円当たりでトルコリラをたくさんもらえるように変化してる。これは円の価値が上がったってこと。だから円高。
ハナ 頭がこんがらがりそう。
岡根 わかりにくければ、円の表示が小さくなると逆に円高と覚えちゃえばいい。これは米ドルとの関係でも同じで、1ドル=120円から100円になると円高ってこと。
ハナ 円高になると損するんですよね?
■高金利通貨はインフレ率も高い
岡根 手数料を無視して考えてみる。1トルコリラ=60円だったときに1トルコリラ分の債券を買うと60円払う。でも今それを売ると16円しか返ってこないってわけ。
ハナ 大損じゃないですか。でも母はこの債券を買ったとき金融機関の人に「日本は低金利。トルコは金利が高いからお得」と言われたらしいの。どうしてですか?
岡根 ちょっと長くなるけどいい?
ハナ 嫌かも。3秒くらいで。
岡根 …無理。高金利の国というのは基本的にインフレ率が高い。そしてインフレ率が高いと同じお金で買えるモノの量が減ってしまう。例えばトルコはここ数年、年に1~2割ずつのインフレ。トルコリラのモノを買う力、つまりお金の価値は年に1~2割ずつ下がり続けているということ。そして為替レートというのは、突き詰めれば2つの通貨の交換比率だ。ニッセイ基礎研の上野さんは「インフレで価値が下がった通貨は、長期的には交換比率である為替レートも下がる傾向にある」と話しているよ。
ハナ 逆に日本みたいにインフレ率が低い通貨は、長期では為替レートが円高になりやすいということですか?
岡根 たまに理解が早いね。
ハナ YDK(やればできる子)っていわれます。
岡根 為替レートが長期的には2つの通貨のモノを買う力(購買力)を反映して動くという考え方を購買力平価っていう。グラフはトルコリラを対象に購買力平価で計算した理論価格と、実際の為替レートを示している。インフレ率の高い国は購買力平価が示す理論値が通貨安の方向に進むんだ。
ハナ 実際の為替レートもジグザクはしながらも理論値を反映して通貨安になっていますね。
■大原則は様々な資産への分散
岡根 南アフリカランドやブラジルレアルなど日本人が好む他の多くの高金利通貨も似たような動きをしている。これを知らないと、金融機関の「新興国通貨は金利が高くてお得だし、今はとても安く買えますよ」という売り文句をそのまま信じてしまう。そして5~6年たってもうかっていないと「たまたま円高になって運が悪かったのね」とあきらめる。でもそうじゃなくて、金利差が通貨下落で失われやすいという普通のことが起きてきたにすぎないんだ。
ハナ ちょっとがっかり。
岡根 もちろん為替は波があるので、時期によっては新興国通貨高と高金利の両方で大きな利益を得られることもある。投資の大原則の一つは様々な資産に分散することなので、新興国債券も資産の一部として持つ選択はある。でも「高金利だからお得」と信じ込んで、資産のかなり大きな割合が新興国通貨の債券になっている人も結構いるので要注意だね。
■投資初心者 ここがドツボ
割高な手数料にも注意
ある証券会社のトルコリラの為替手数料は債券を買う場合と売る場合で片道1円50銭ずつ。例えば1トルコリラ=16円のとき、トルコリラを買うためには17円50円払わなければならない。満期になったとき、為替レートが一定なら今度は14円50銭で売ることになる。往復では3円かかる。ちなみ米ドルの場合、往復は50銭だ。
単純に3円と50銭を比べてはならない。為替手数料は為替レートに対する割合でみる必要がある。1トルコリラ16円に対する3円は約19%弱に達するので売買でもうけることは難しくなる。米ドルなら同じ計算で往復0.5%の負担なのと段違いだ。新興国通貨投資がもうかりづらいのはこうした手数料の高さも一因だ。
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お金の制約なしに人生の様々な選択ができる経済的自由(Financial Freedom)。それに近づくために必要な運用や社会保障の知識を、会話形式でわかりやすく伝えるコラムです。毎週水曜日に掲載します。
編集委員。証券アナリスト(CMA)、ファイナンシャルプランナー(CFP)。著書に「人生100年時代の年金戦略」「税金ゼロの資産運用革命」など。田村優之の筆名の経済小説「青い約束」(原題「夏の光」で松本清張賞最終候補)は13万部に。
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April 12, 2020
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新興国通貨が急落 「高金利はお得」のワナ - 日本経済新聞
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